言語聴覚士と神経心理学

言語聴覚士が神経心理学に関することを徒然なるままにつづるブログです

言語聴覚士が行う神経心理学的検査~スクリーニング~

はじめまして karashirenkonです。

 

前回前々回と、なぜ神経心理学に興味を持ち言語聴覚士になったのかを、名刺代わりに書かせていただきました。

 

今回からは少し趣向を変えて、いくらかでも臨床に役立つことを書かせていただこうと思います。

 

今日から数回にわたって、言語聴覚士が実施する神経心理学的検査について、その概要と注意点を書かせていただきます。そののちに、現場で起きている問題点を挙げていこうと思います。

 

今日はスクリーニングに関する検査です。

 

スクリーニングとは、患者さんとほぼ初めて対面するときに、その人がどんな神経心理学的問題があるかを、短時間で評価する検査です。

STが患者さんに会う前に、医師が診察ですでに実施していることもあります。

 

Mini-Mental State Examination(MMSE)

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

この二つが代表的な検査です。

 

この二つには共通した項目がいくつかあります。

 

まずは見当識(けんとうしき)に関する項目です。

今日が何日であるか

今いるこの場所はどこであるか

こういった認識は一言で見当識という言葉で表されます。

長谷川式では答えられない場合、3択で尋ねて当てられるかも評価します。

 

もう一つ重要な共通項目は、短期記憶の項目です。

互いに関係のない3つの名詞を一度に聞かせ、少したってから、“さっきおぼえた3つの言葉はなんでしたか?”と尋ねます。

答えられない場合は、その言葉のカテゴリーをヒントで与えたり(動物に関する言葉でしたよ、など)、それでも答えられない場合は3択で尋ねます。

 

他に検査者が言った文を復唱する、みせられた物の名前を言う、簡単な引き算、図形の模写、1分間のうちに野菜の名前をできるだけたくさん挙げる、などがあります。

 

二つ検査はともにあまり特別な道具が必要なく、検査用紙はインターネット上で入手できるので、比較的実施しやすい検査である、というのも共通する利点です。

 

ただし注意があります。

この二つの検査はともに言語性の項目が多く非言語性の項目が極端に少ないという欠点があります。

 

これはどういうことかというと、

検査で患者さんにしてほしいことを伝えるのに言葉を使わなくてはならず、

かつ、患者さんも反応はことばを使ってしなければならない検査である、

ということです。

 

たとえば上記で挙げた見当識の項目ですが、

今は何日ですか?ここはどこですか?と言葉を使って尋ねます。

 

もしも患者さんに失語症や難聴があったりすると、質問を正しく聞き取れません。

また、患者さんに失語症や構音障害があってことばを正しく言えないと、質問の内容はわかっていても正しい答えを発することができません。

 

言語障害があると軒並み点数が低くなり、点数だけみると重度の認知症の方と変わらない成績になってしまうのです。

言語障害がある場合は、他に非言語性検査を実施することを検討することになります。

 

次回は失語症に関する検査についてお話いたします。